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コールセンターコラム
〜第二章 賢いマネジメントになる〜

第11回 経営層をコールセンターのファンにするには

コンタクトセンターのマネジメント運営課題の9番目には「経営者がコールセンターに理解がないこと」がランクインしています。
でも経営者は本当に理解がないのでしょうか?
社内にセンター組織が存続している限りは経営陣も必要だと認識しているはずです。
ただ過大評価が禁物なのは、そもそも経営陣はコールセンターを戦略投資部門とはみません。(受注センターは別として)プロフィットを生むものではなくコストセンターだと考えています。管理部門に位置づけられていればそれは当然です。
経営層はコールセンターの業務をどれだけ理解しているでしょうか?経営者にいくつかの質問に答えていただきましょう。

  • Q: 原則的にPCと電話があればコールセンターは稼働する。
  • Q: オペレータの稼働率は100%を目指すことが一般的だ。
  • Q: コールセンターの業務は派遣社員かパート・アルバイトで十分回せる。
  • Q: 売り上げの1%程度の費用でコールセンターは運営できる。
  • Q: コールセンターに入る問い合わせはコールセンター内部で全て処理するべきだ。
  • Q: コールセンターは年中無休で運営した方が良い。

一般的にはこのすべての質問に対して経営者の答えはYESです。
このような理解度だと理解しておく必要があります。

かたやコンタクトセンター側のマネジメントの意識です。皆さんには次の質問に答えて頂きましょう。

  • Q: コールの入電予測は正確さを求むべくもないので、1日単位に±10%程度であれば十分だ。
  • Q: 1日単位の即応率と応答率を見ていれば適切な運営ができる。
  • Q: お客様が迷わないように、コールセンターの電話番号は極力ワンダイヤルが良い。
  • Q: スーパーバイザーとオペレータの人数比は1:8程度が適切だ。
  • Q: 解約抑止は全てのオペレータができるコア・バリューであるべきだ。
  • Q: アウトソーサーはプロなので、何でも任せる方が良い。

皆さんの答えにはYESがいくつありましたか?
コンタクトセンターを運営する専門スキルに照らして質問に回答すると答えは全てNOなのです。
経営層がコンタクトセンターの運営に関与しない、顧客応対の重要性を理解していないとセンターマネジメントが感じるギャップの根源は“専門性の認識”にあります。
人数規模が大きいことを除けば誰でも運営できると思っている経営者と、専門性を発揮できないマネジメントの間には理解を阻む大きな溝があります。
溝を乗り越えるためにはコンタクトセンターのマネジメントはプロとしての専門性を身に付ける必要があります。

イー・パートナーズ 谷口 修

コンタクトセンターと経営層の視点の違い

一般的にコンタクトセンターのマネジメントは、組織としてのコンタクトセンターの部分最適を目指します。従ってセンターに入電するコンタクト全てをうまく処理しようとして、コンタクト全てを“顧客”と捉えがちです。区分があったとしても“新規”か“既存”か、チャネル単位か、といった区分けでつながりやすさや応対品質を気にすることになります。

しかしながら経営層は顧客をさらに大局的に捉えていて、コンタクトしてくる以前のサイレントカスタマーも含んで潜在顧客の動向も気にしますし、既存顧客の中でもVIPや一般顧客の差や取扱商品単位の顧客行動や購買動向が気になります。商品がリピートされているか、キャンペーンは奏功しているか、マーケティンや戦略がどのように顧客行動に影響があるかを知りたいわけです。

期待値はCCO(Chief Customer Officer)としてのセンス・オブ・オーナーシップ

経営陣にはそれぞれ専門性に特化した役員がいます。
経営のプロとしてのCEOを中心に、COO、CFO、CTO、CMOといった専門領域のプロがいなくてはなりません。そのような肩書がないとしても機能的に専門分化された経営陣が必要とされます。

本来は、それらCXOの一員としてのコンタクトセンターを管掌するCCO:顧客の維持拡大に専門性をもつ役員がいてしかるべきなのです。
大局的な視野を持つCCOであれば、単純にコンタクトに対する応答率を常に達成していることや、応対品質が基準値を上回っていること、適正な要員で運営している要員充足率や離職率を満足しているといったセンター部門最適なオペレーション指標だけでは顧客の維持拡大に貢献しているとは言い難いはずです。
それよりも業績の先行指数と言われるNPSを高めるためにカスタマーサクセスやサブスクリプションがうまく機能している顧客応対のメカニズムを作り上げるマネジメントが重要です。
センターマネジメントは、経営に対してはオペレーション指標ではなくビジネス貢献指標を常に追求することが期待されていることなのです。

理解されていないと感じるセンターマネジメントには経営貢献度をアピールする表現や手法に工夫が必要です。合理的に納得できる説明に対しては経営は耳を傾けます。コンタクトセンターが全社戦略にどのように寄与しているかを表現できる専門性に基づく見識を示すことが大事なのです。
自らの経営感覚を研ぎ、同じ土俵で議論できるようになれば経営者の理解も進み、ファンどころか重要な経営資源としてコンタクトセンターを論じることができるようになるはずです。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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