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これからの
コールセンターコラム
〜第二章 賢いマネジメントになる〜

第12回 賢くテクノロジーを使うには

日常生活でSiriやOK Google、Alexaとの対話が普通になってきました。
スマホやAIスピーカーでの音声認識技術が市民権を得てきました。
おじいちゃんおばあちゃんがFacetimeで孫と会話することも普通の光景です。
高齢者でもスマホやビデオコミュニケーションが問題なく行えるくらいデジタルシフトは進んでいます。
スマホ利用者はmessengerなどのショートメッセージやLineでの会話が当たり前になっています。
PCメールよりもSMS,SNSの利用頻度が日常生活では著しく高くなっています。
一般生活に普及したテクノロジーを追いかける形で、これから企業のコミュニケーション施策としてのマルチチャネル化は一気に進みます。
電話だけに対応していた電話交換機は、マルチメディア対応のゲートウェイとなり全てのチャネルコントロール機能をコールセンターに提供してくれるようになります。

音声認識に違和感がなくなった消費者は、コールセンターのIVRでAIスピーカーと行う会話のようなやり取りも抵抗感なくできることになります。
普通の会話でお客様の要件を理解し、答えが用意できていれば回答するAI-IVRが受け入れられる環境となり、併せて声紋認証といった生体認証での本人特定でセキュリティを高め顧客との絆作りを意識した対応が可能になりました。テクノロジーの基礎部分でAI自然言語系テクノロジーは基盤技術となります。

デジタル化はコールセンターの内部にも及び、アナログ音声の会話はテキスト化され、さらに要約されVOCの材料となっています。応対品質領域でも、テキストレベルの解析で企業の期待する品質標準に適合しているかどうかの評価を自動で機械が行えるようにもなってきました。加えてアナログ音声そのものから、感情解析技術で顧客の理解度、怒りや感謝などがリアルタイムに分かるようになってきました。延長上には人それぞれ異なるコミュニケーション・タイプの判定もできる技術があります。顧客のタイプが分かれば個別応対の接客品質を著しく向上させることも現実味を帯びてきました。
VOCに限らず多くのデータを利用することによって、外向けに顧客対応施策として、あるいは社内の効率・品質強化策として使える便利な時代になったわけです。おまけにクラウドサービスとしてこういったテクノロジーが使える環境になったことはコールセンターにとっては福音です。
使い勝手の良いテクノロジーが市場に出回っている状況でどれを選ぶか、どういう優先順位で何を行うべきかを、効率性と経済性の視点で判断できる環境になったのです。

イー・パートナーズ 谷口 修

テクノロジーを使うには、使う人が賢くなければならない

顧客接点の様々な情報が集約するコールセンターは、言ってみれば企業のインテリジェンス集積地です。
企業のビッグデータはコンタクトセンターにあるといって良く、他のどの組織よりも戦略を生み出しやすい環境がそこにあります。
とはいえ増え続けるデータを賞味期限のある内に活用するには知恵が必要です。
自社センターに導入すれば投資効果の優れたテクノロジーは何か、を考える際には実態を知っていなくてはなりません。実態とは次のような問いに対する答えです。

  • ・どのような顧客からの問い合わせを受けているのか
  • ・いつ問い合わせが来ているのか
  • ・どのくらいの量なのか
  • ・どのような経路での問い合わせか
  • ・どのような理由で問い合わせがあるのか
  • ・応対にどれだけの時間をかけているのか
  • ・お客にとって有益な対応をしているのか
  • ・会社にとって有益な対応をしているのか

という問いに明確な答えが必要なのです。
第6回コラムに100日改革のロードマップを書きましたが、その中の11週目に登場している“VIマトリクス”を使えば、どのような問い合わせ領域に自動化ソリューションが適用できそうか、どれくらいの効果がでるか、サービスプロセスの改善を必要とするVOC探勝領域はどこか、そして将来のセンターの事業方針を決めることができます。(是非バックナンバーをご覧下さい)
これを実現するには「コンタクトリーズン」が体系化されている必要があります。
コールリーズン体系は処理内容と処理時間を紐付ける考え方なのでコンタクトのゲートウェイ(交換機)に実装される必要があります。
シュリンケージの内容である離席理由の記録と同様に、マルチチャネルでコールリーズンがとれる環境を整備することによってその先の未来図を描くことが可能になるというわけです。
すぐ使えそうなテクノロジーを衝動買いする必要はありません。自社の環境を見極めたうえで必要なテクノロジーを選り分けて使って下さい。そのために遠回りように思えるかもしれませんが、コールリーズンと処理時間を基に戦略を考えるという運営の基本に立ち返ってみて下さい。

コールセンターの運営はサイエンスです。でも多くのセンターではサイエンスを実践するアナリストや、トレーニングのスペシャリスト、ワークフォースマネジャー、QAマネジャーなど本来必要とされる人が不足しています。人がいないからといってそれらの領域をテクノロジーで代替させることはまだ無理です。
今は未だ道半ばです。機械と人間が協調して働くハイブリッドな運営にこれから移行する時期です。労力はかかりますが、まず実態を踏まえた将来戦略を描きましょう。テクノロジーはあくまでツールです。運営を科学するのは人間の務めであり人でなければできない仕事と心得て知恵を絞りましょう。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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