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コールセンターコラム

第5回 本質を追求することが運営の基本

コンタクトセンターの使命は徹底的にCXを追求することにあります。
CX追求を目指すセンター運営にはなくてはならない行動指針があります。
問題課題が発生すればその対処を急ぐといった対症療法にあけくれる運営ではなく、問題や課題を発生させないように普段から目配りする組織とメカニズムを持つことが不可欠なのですが、その恒常的な活動になくてはならない運営原則が“本質を追求する姿勢”です。
対症療法では本質課題を解決できないことは明白であり、遠回りのように見えても根本原因解決を図るほうが結果的には合理的です。
常に運営の方法や変化を敏感に感じ取り、顧客の行動や期待と現実の対応のギャップを知り、よりシンプルに、より簡単に、より便利なコミュニケーションの仕組みに変革をし続ける文化風土と組織運営施策が重要なのです。

イー・パートナーズ 谷口 修

本質を追求すべきは顧客の期待

コンタクトセンターの運営目標が顧客満足やCX追求にあるならば、まずは顧客の期待を知る必要があります。やみくもに“全てのインバウンドコンタクトに期待以上の回答をする”と宣言しても実効性のある目標設定と改善計画がなければ掛け声だおれに終わります。まずは分かりやすい顧客の“顕在”期待を知る努力から始めましょう。
“買いたい”“教えて下さい”など顧客が要望を言葉にできるものが「顕在期待」ですが、センターに寄せられる顧客の声は様々な内容です。次に示す通販会社のカテゴリー別にコンタクト分類したフィッシュボーンからもわかるようにコンタクトリーズンは千差万別です。本質を追求するセンターでは顧客がわざわざ問い合わせてこなければならない状況を作り出してしまっていることを認識して、コンタクトを顧客の“ペイン”(痛み)と捉え、それを発見して解消を図る事を考えます。コンタクトリーズン別の根本原因分析と、その解消のための仮説・改善アクション・結果検証のプロセスを回すのです。

その結果、顧客がわざわざ問い合わせをしなくても済む状況を作りだすことになり、裏返せばすなわち“エフォートレス”な状況となり、本質的な顧客の顕在期待に応えることになります。CX追求はエフォートレスの先にあります。

応対の本質的目標は顧客のロイヤルティ強化

顕在期待に応える努力をしながら、コンタクトセンターは顧客のロイヤルティステージを上げる努力が求められます。
一般消費者(お客)からの顕在期待に応えることで晴れて「顧客」を獲得すると、それ以降は「顧客」を益々商品・サービスに愛着を持って頂く「ファン」化し、更に継続的使用を約束する「信者」へ、そして更に会社の代弁者のように周囲に普及してくれる「伝道師」となって頂けるように顧客のロイヤルティを強化することがコンタクトセンターに対する会社の期待となります。どれだけ多くの「ファン」や「信者」「伝道師」を持つかが企業の安定的財政基盤の構築要素です。
ロイヤルティ強化に際しては、単純な要望に迅速正確に答えるだけでは顧客をうならせるようなレベルにはなりません。「わざわざ電話してよかった」と満足して頂くには顧客が言葉にできない“潜在”期待をオペレータが察して対応する高度な仕組みやスキルが要求されるのです。ここには“人”でしか提供できない応対価値があります。
とはいえそれは気合で実現できるものではなく、組織的な指名制や担当制といった施策、各顧客セグメントに対する応対スキル強化トレーニングやロイヤル顧客専用のサービスプロセス開発などの工夫も必要です。

事業の本質的な目的を追求する

事業の成長には顧客数の維持拡大が欠かせません。収益性を確保するためには、商品・サービスと提供プロセスの品質強化に併せてそれぞれの顧客のRFM(最新購入日、購入頻度、購入金額を基にした顧客の購買行動)強化も必要となります。コンタクトセンターの本質的な事業貢献はそこにあり、直接的なCX追求と併せて全社的な顧客応対プロセスの強化に取り組まなくてはなりません。
事業の本質とコンタクトセンターの組織目標を明確にしてみましょう。
理論的には企業の提供する商品・サービスが素晴らしくて顧客が満足ならば顧客からの問い合わせやクレームはないはずです。最高の企業品質は顧客からのコンタクトがない状態、でありこれを「ベストサービスはノーサービス」と呼びます。企業の経営陣は皆例外なくこういう状態を望みます。
コンタクトセンターは、顧客に対するエフォートレスな環境を構築することで顧客の問い合わせ負荷を軽減し、そして究極的には問い合わせそのものを不要にしてしまう、というメカニズムをドライブすることができます。事業の本質を追求すると、コンタクトセンターへの問い合わせが少なくなることになるわけです。
企業を代表して顧客対応の一元化をになう組織として設立されたコンタクトセンターは、まず顧客からの問い合わせに対応することが必須なので「つながりやすさ」を保証しなければなりません。そのうえでオペレータは「顧客ロイヤルティを高める」質の高い応対を期待されます。更に顧客の声から「他部所が知るべき情報提供」を行いますが、最後は全社あげての「ベストサービスはノーサービス」を追求する旗振り役となるのです。それを実現することによって企業品質を強化し、顧客からの問い合わせは極小化します。
(言うまでもなく「予約/受注センター」や「キャンペーンデスク」といった営業チャネルへのコンタクトを少なくするということではなく、あくまでカスタマーサービスへのコンタクトを極小化するということです)

「ベストサービスはノーサービス」が実現できているかどうかを確認するためには、CP“X”を指標として利用します。Contact per “X”の略ですが、Xには企業の事業特性に合わせた変数を用います。
例えばカード会社であればカードホルダー数をXとすると、会員数あたりのコンタクト数となり、ある一定期間の会員数増加率に対してCPM(カードホルダー当たりコンタクト率)が減少傾向であればベストサービスはノーサービスに近づいていると推測できます。
通販会社であれば注文数をXとすれば、CPO(オーダー当たりコンタクト率)の増減でプロセスや商品の品質レベルを判断することができます。CP“X”を用いれば、コンタクトセンターの事業貢献度合いがわかるのです。
どのような業種でもビジネス基盤の数とコンタクト数の比率(CP“X”)に注目することで、会社の全体品質を見ることができます。すべての部門が利用でき、指針として活用できるCP“X”はビジネスKPIとして最適な指標です。

本質を追求する“価値”

コールセンターのガバナンスは、レベル1.ではサービスレベル、レベル2.では応対品質スコア、レベル3.ではVOCレポートや提案数が、そしてレベル4.ではCP“X”というように指標を追求するサイエンスが基本となります。併せて益々複雑かつ高度となる顧客対応をこなす高い目的意識とプロ意識を備えた“人”の組織を束ねるアートです。
その運営成果を経営陣に正しくアピールすることがコンタクトセンターのマネジメントには求められています。
応対のパフォーマンスや組織としての退職率などの運営指標も重要な指標には違いがありませんが、ビジネス指標を用いて部門を超えて全社最適なパフォーマンスを生み出していることをアピールすることが重要です。
事業貢献を託されたコンタクトセンターとして自社なりのCP“X”を掲げてその価値貢献度を示しましょう。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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