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これからの
コールセンターコラム
〜第二章 賢いマネジメントになる〜

第9回 イノベーションを自ら興すには

センターマネジメントの抱える課題である、「対応品質向上」「生産性・効率の向上」「呼量削減」等は人手が足りても解決できません。
解決するには極力即効性のある打開策が必要です。センター運用は複雑系のシステムなので本来解決には時間がかかるのが当然なのですが、今の時代スピードの早いイノベーションが期待されます。
そもそもコールセンターの歴史はイノベーションの歴史でもありました。
必要要員数を計算するアーランC計算式がコンタクトセンターの最初のイノベーションだと言えますが、以来オペレーション効率化に寄与する考え方やツールが続々と生まれています。本質に向き合えば現状打破の突破口が開けます。ではこれからイノベーションを興すにはどうすれば良いでしょうか?

イー・パートナーズ 谷口 修

運営効率を飛躍的に高めるイノベーション

例えば、「品質向上」を求めるにはスクリプトは足かせです。同じパターンのコンタクトに適用できる手順や会話内容を定めたスクリプトはコンタクト大量処理時代には有益なツールでしたが、多様性の時代にはスクリプトなくオペレータ自身の言葉であるいは言い方でお客様との会話を紡ぐ必要があります。「スクリプトレス」は1つのイノベーションです。
スクリプト同様に、画一的な“応対品質の評価”には無理があります。サンプリングモニタリングの公正さや公平さに問題があることは従来から指摘されており、評価基準の見直しも必要です。教育水準が高く責任感も強いオペレータが特徴的な日本においてはオペレータ自身で自分の応対を全件評価することのほうが公平公正でありモチベーションにも寄与します。「応対品質全件自己評価」もイノベーションです。
それらは投資も不要な即効性の期待できる品質向上策です。

また、このような考えのもとで自律的なオペレータが育てば、チームには“SV”というマネジメント職も不要になるかもしれません。「SVレス」もイノベーションでしょう。職務定義を見直す必要がありますが、オーバーヘッド率が改善され組織効率は良くなります。
加えて顧客からのインバウンドのコンタクトを待つのではなく、コンタクトの予約をして頂くかの如くコールバックで要件に最適なオペレータがアウトバウンドする方がはるかに顧客の期待には合致します。
加えて、CXを追求するためのオペレータの指名制や担当制といった組織運営は、顧客の再購買やLTVを強化することができるとの認識が浸透してきましたので今後は運営のスタンダードとなるでしょう。
AIを含め多くの先進テクノロジーによるイノベーションに加えてこれらは全てオペレーション分野におけるイノベーションです。
誰しもが抱える運営課題の根本原因の追究はイノベーションの母なのです。

顧客を虜にするカスタマージャーニーを生むイノベーション

企業ははからずも顧客に混乱や分かりにくさ、様々な不便や迷惑をかけています。コンタクトセンターは日々顧客と接しているがゆえにリアルな顧客の反応や声に触れています。
その昔Amazonでは、注文するたびに支払方法や配送先を入力しなければならないという顧客の不満を耳にしていたコールセンターがその解決策として“ワンクリック”を提案しました。創業4年目のことです。以降、私が欲しい物の中から贈り物を決めて下さいという“ウィッシュリスト”や、この作者の新刊を教えてという“アイズ”といった機能も顧客の声から生まれました。
パートナー倉庫から直送する“ドロップシップ”や“領収証”のフォーマット迄コールセンターが提案して実現しました。多くのお客様のご意見を直接お客様に書いて頂こうということから“レビュー”も始まりました。全ての商品に責任を持つ必要があることから“アマゾン倫”規定も誕生しました。

注文しようとすると、“この商品は何時いつお買い上げになりました”と画面に出てくるので、余計に買うところだった、と注文を控えた方も多いと思います。これで返品コンタクトは大幅に減少します。
“生産性向上”“呼量削減”などの課題は、カスタマージャーニーが円滑になればコンタクトが減るという因果関係を前提とするプロセスイノベーションが何よりの課題解決の近道です。
常に身近にある顧客の声は、イノベーションの父です。

現状課題を打破する改善策となるイノベーションを興すことは決して難しいものではありません。
失敗から学ぶことや、仮説を立てて検証する、なぜそうかを徹底的に問い直すなど本気で業務に取り組む姿勢があれば生まれるのです。
何のためにやっているのかよく分からない施策や、何のための目標かわからないKPIなど誰が決めたか分からない運営、言い換えれば前例踏襲型の運営から脱却して、理想と根本原因を追究する運営を展開しましょう。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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