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第2回 顧客の潜在期待に応える3か条

コンタクトセンターが提供できる価値は、ただ早くオペレータにつながること、にあるわけではありません。ASA(Average Speed of Answer:平均接続時間)は長いより短いほうが良いとはいうものの、いかに短いかがセンターの優劣を決めるものではありません。同様に全てのコールに対応する=応答率が高ければ良いというものでもありません。
限界効用逓減の法則はセンターのリソースマネジメント上の不変の法則ですから、つながりやすくする=オペレータの数を無駄に増やすことはコスト効率を悪くするだけです。コストバランスを考えなくてはなりません。
また、顧客からのコンタクトは千差万別であり、全てのコンタクトを同列に扱って接続時間や応答率を目標にすることには無理があります。
様々なコンタクトの中でも“人”が対応することで、顧客にとっても、会社にとっても有意義な応対に集中し、人でなければ提供できない“価値”を生み出すことが重要です。
顧客は自分でできることは自分でします。わからないことがある場合や不便を感じる場合にセンターに連絡して来るわけですから、センターでは丁寧に顧客に対応し、顧客を教育することと併せて顧客からの指摘をもとに会社のプロセスの悪さを改善する努力が必要です。そして、改善されたサービスプロセスにおいてもなお寄せられる顧客の期待に応える応対を追求する必要があります。
顧客の期待には「選択肢の提供」、「価値認識に基づく応対」、「顧客負担をなくすプロセス改善」という3大期待があることがわかっています。守るべき3か条を順に説明しましょう。

イー・パートナーズ 谷口 修

第1条 選択権は顧客側にある、ことを前提とする

・チャネルは私が選びたい

固定電話、携帯電話、SMS(ショートメール)、SNS(LINEやMessenger)、ビデオ(FaceTime等)、webフォーム、eメール、チャット、FAX, はがきなど日常的に他者とのコミュニケーションに利用しているチャネルは、対企業(コンタクトセンター)でも同様に使いたい欲求があります。企業側が制限を設けていては顧客のストレスとなります。チャネルの選択肢は用意されていなくてはなりません。また、必要な時どのチャネルでのコンタクト対応が可能かはわかりやすく顧客に周知されているべきです。

・私の時間の使い方は私の自由にさせて

チャネルは必要な時いつでも使える必要がありますが、併せて考えるべきは顧客の時間の使い方期待です。忙しい時の対応は用件を簡潔に済ませたい、余裕のあるときにはじっくり説明を聞きたい、といった応対時間の使い方選択肢も顧客側にあります。縛りはないことが望ましいのです。

・私だけではなく、私の周囲の関係者も同じ様に扱って

顧客自身問い合わせをしたいけれども時間がなく、誰か周囲の方(夫婦、家族、秘書/同僚等)に代わりに問い合わせを頼みたい潜在欲求は存在します。代行問い合わせに事務的なルール重視の対応をしていると他人行儀と映ります。プライバシーと本人確認、権限委譲のルールと仕組みを再考しなければならない時代になっています。

・商品も私が選びたい

商品戦略はセンターとは関係がない、とは言えません。顧客との応対プロセス戦略に責任を持つセンターでは、商品やサービスに対する顧客の嗜好に関わる姿勢が必要です。合理的な理由での商品価格や組み合わせの変更、ライフスタイルに合わせたカスタマイズ(何を、どれだけ、デザイン/アレンジ)ができることが潜在期待です。

第2条 顧客は自分の価値を認識している、ことを理解する

・私の生涯価値(since, RFM, LTM)をわかっているよね

いつから一般の「お客」から商品やサービスを購入した「顧客」になったか、何年来の取引か、その間どれだけの金額を支払っているか、将来にわたってどれだけの金額を支払うと想定するか、については、顧客は自分自身の金額換算価値をわかっています。企業にもわかっていてもらいたいと思っています。

・私の示唆を苦情と捉えないでね

せっかく意見やアドバイスをしているのにオペレータは取り入れるつもりがない、という示唆と苦情の取り違えは大きく顧客の期待を損ねます。会社にとっての価値を伝えようとしているのです。

・私に負担をかけていることわかっているよね

顧客満足度調査に協力しないわけではないけれど、面倒なプロセスと時間を費やす私の負担はどうでもいいわけね、という印象を与える調査は顧客のロイヤルティ低下という大きな代償を生みます。そもそもコンタクトをすること自体が顧客の負担であるわけで、顧客価値を減じるようなアクションを取ることには注意が必要です。

・会社の事情を押し付けないでね

ある事業部とは古いお付き合いがあるけれど、別事業部での取引では全く一見さん扱いだった、であるとか、同じロゴを掲げているグループ企業やフランチャイジー展開をしている店舗などでも、私との付き合いを踏まえた応対をしてもらいたいのは当然の期待です。センターは顧客から見ると唯一の会社との接点です。

・本当は無期限保証してもらいたいものだね

商品の品質保証期間や条件は決まっていることをわかっているものの、顧客の究極の期待は無期限保証です。生涯価値やその他上記の価値認識を踏み台にして顧客は、単純に応対ルールに則った事務的対応には拒否反応を示します。顧客との信頼関係を維持しつつ、柔軟な対応、長期的関係樹立の提案や教育指導が必要です。

第3条 コンタクトは会社が作り出している、と顧客は感じている

・買いやすくないから電話しているのよ

買いたい気持ちになったらさっさと買えることが満足につながる。Webのクリックや入力の煩雑さや条件選択の複雑さなどが水を指し、おまけに電話で注文をするはめに陥った顧客のコンタクトは会社の未熟なプロセスに起因するものです。

・杓子定規な対応にはムカつく

標準的に決められたフローと範囲におさまらない顧客のコンタクトは顧客の納得感が醸成できず対話が長くなるか、2次コンタクトを誘発する。キャンペーンや配送時間の締め切り時間の間際のコンタクトなど、杓子定規な対応では期待に応えることはできません。

・言ったことを理解しなさい

顧客価値を過小評価することや、顧客の会話の本質を理解しそこねると更なるコンタクトや問題に発展します。言った言わない議論に陥ることは往々にして最初の顧客のコンタクトを過小に評価することが起因します。

・転ばぬ先の杖くらい提供したら?

問い合わせの内容に対してはしっかり答えてもらったものの、時間が経つと次のステップでの対応策を聞いていない、という場合はまたコンタクトが発生します。今いまの課題対処は大丈夫だけれど、この先に起こり得ることに対する心構えを転ばぬ先の杖(=ちょっとした思いやり)として聞かされていれば再びのコンタクトにはなりません。むしろ改めて気遣いを感じることになります。

・ユーザー同士に秘密はないね

顧客は既にシェアリングエコノミーに生きています。良いことも悪いこともSNSや様々なメディアで共有されるのが現実です。
悪いレビューや評価が拡散すること、商品の適性用途、性能や効能に疑問が呈される、会社が期待した解釈や理解を正しくしてもらえないのはどこかに解決すべきサービスプロセスや会社の問題があるはずです。

潜在期待に応えて“価値”を提供する

インバウンド・コンタクトを待ち受けるタイプのセンターでは賢い顧客からは不興を買います。つながりやすいだけでは顧客の期待に応えることはできません。Me2B時代の顧客の潜在期待は以前とは比べものにならない深さと広さです。その現実を踏まえて顧客応対のメカニズムやルールを再構築しなければなりません。近未来のセンター像は、顧客の期待に応えて必要に応じて積極的・能動的に顧客とのコンタクトをとる「以心伝心」タイプのセンターです。
顧客にどのような価値が提供できているかが評価の基準となります。読者の皆さまは激変する経済環境を見据えた経営視点とMe2B時代の顧客視点を併せ持つ顧客対応のマネジメント能力を身につける必要があります。次回も引き続き変革への近道となる考え方をご紹介します。お楽しみに。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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