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コールセンターコラム
〜第二章 賢いマネジメントになる〜

第10回 人が辞めないコールセンターを目指すには

定着率向上が課題のセンターが多いといいます。
スタッフが定着しないと新規の採用・教育に明け暮れ、センター全体の応対品質の劣化を招き、ひいては顧客維持や継続購買に悪影響がでます。定着率を向上させることはどのセンターでも共通の目標です。
チャレンジは、定着率の逆数である離職率を低減させることになるわけですが、第1に採用時、第2に初期研修時、そして第3段階として就業以降の離職発生原因を時系列的に解消する必要があります。
昨年実施した弊社の調査では、30%を超える退職が初期研修期間中に発生していることが明らかになっています。また、年間退職率センター平均20~30%という数字はまだまだ良い方とされており、50%以上というところも珍しくはありません。定着率向上が課題なのは明らかです。
原因は、第1段階で “想像していた仕事と違った”と感想を述べる候補者が多いのは採用の仕方に問題があります。第2段階で“思った以上に覚えることが多い”と初期研修で脱落する人の多いのは研修の仕方に問題があります。この2つの段階の原因と改善策は明白なので、ここでは第3段階のデビュー以降の離職について考えたいと思います。
デビュー以降に辞める理由は以下に集約されています。

  • ・仕事が想像していたものと違って難しい、続けられない。
  • ・先輩や上司についていけない。
  • ・周囲に素敵な人がいない。はりがない。
  • ・顧客対応以外の時間にいろんな人とのコミュニケーションする時間がない。つまらない。
  • ・会社の盾になって顧客の不平不満に対応しているのに会社は何も手を打たない。ばからしい。
  • ・規則や制約が多くて息苦しい。ストレスがたまる。
  • ・褒められない、達成感もない。

コールセンターの仕事は年々複雑で高度なものになっておりアルバイトで楽々こなせるようなものではありません。日常の生活にはない顧客応対の作法やルール、システム操作に業務知識といったノウハウとテクニックが求められます。AIやロボットとの共存が当たり前の運用になる中で、知識とスキルのあるスタッフに継続就業してもらわないと困ります。
そのような専門スキルを身につけ、かつ顧客や会社に貢献するJOBロイヤルティのあるスタッフが求められます。正規非正規を問わずJOBロイヤルティにあふれたスタッフは前述のような辞める理由は言いません。
彼らに共通するのは全員が「プロ意識」を持っていることです。

イー・パートナーズ 谷口 修

プロ意識がゆえにモチベーションが維持される

プロ意識は自立心とリーダーシップ、そして日常的なモチベーション維持の源泉となります。
この意識がスタッフに備わったセンターではよほどのことがない限り離職は発生しません。

プロ意識を形成する要素は、4つの領域に存在します。サイエンス、アート、エンジニアリング、デザインです。やるべき仕事がどのように会社や顧客のためになるかが明確に示されている組織設計(デザイン)ができていることが必要条件であり、それをどのように具体的にこなす(サイエンス)、あるいは学びながら目標達成に向けてチャレンジする(エンジニアリング)文化風土と環境が整備され、周囲と協働できる状態(アート)があることが十分条件となります。
プロ意識は明確な組織目標とそれを支える制度・文化によって育まれます。

定着率はセンター責任者のKPI

プロ意識にあふれているといえども人は人、チームメンバーのモチベーションを保つのはスーパーバイザーの仕事です。そしてプロ意識にあふれた集団を作ることがセンター責任者の仕事となります。
SVもセンター長も自身のKPIとして「離職率」を持つべきです。
モチベーションを支える日常のコミュニケーション不足がないように配慮し、信頼を紡ぎ、お互いにやるべきことをやる必要があります。
適正な離職率の中では、運営プロセスの改善やVOCの強化もされ、SVオペレータ比も広がってオーバーヘッド率も低下するという良い循環が生まれます。

ご自身のセンタースタッフのプロ意識を測ってみてはいかがでしょうか?
半期ごとにでもアンケート調査をしてみると、計数の扱い(サイエンス)、業務への向き合い方(アート)、能力強化・改善手法(エンジニアリング)、制度・環境設計(デザイン)すべてに関する改善課題が浮き彫りになります。参考までにいくつか質問例を示します。

  • ・自分の仕事に誇りを感じたのはどのような時でしたか?
  • ・SVやマネジャーはプロの誇りを高めるためにどのようなサポートをしてくれていますか?
  • ・プロの誇りを保つために大切にしていることは何ですか?
  • ・他部署のスタッフと比べて自分のプロ意識は高いと思いますか?
  • ・プロ意識を強化するために会社は何ができると思いますか?
  • ・友人や家族に自分のしている仕事をどのように説明しますか?
  • ・機会があれば友人知人にこの職場で働くことを勧めますか?

マネジメントからは思いもよらない回答があるかもしれません。予想通りの改善課題が浮かび上がるかもしれません。エンゲージメントの評価はプロ意識の軸で見ることが重要です。是非お試し下さい。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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