トップ > 楽天コネクト Storm >第8回 人の足りなさをどう補うか

これからのコールセンターコラム
〜第二章 賢いマネジメントになる〜

第8回 人の足りなさをどう補うか

読者諸氏もご高承の通り、全国津々浦々で有効求人倍率は高止まりし採用が容易になることはありません。これはコンタクトセンター業界に特有の問題ではなくほとんどの業種にみられる少子高齢化並びに都市化の問題です。
センターマネジメントが直面している現場課題の上位に常に存在するオペレータやSVの採用の困難さは益々深刻さを増します。ただ思い起す必要があるのはコンタクトセンターの歴史は人手不足との戦いの歴史だった事実です。少ない人数でいかに効率的に組織運用するかがマネジメントの手腕の問われどころなのは古今東西変わっていません。

イー・パートナーズ 谷口 修

本当に人が足りないのだろうか?

顧客対応のためにセンターで必要とする人員は、単純化すればコンタクト量X処理時間で計算される時間分だけ用意できればよいことになります。図の面積がそれにあたります。

ただその時間を何のために使っているかを見てみると、コンタクトの中には誤配送やご請求、商品の不具合や案内ミスなどで顧客に迷惑をかけるといったような会社起因の「事故対応」コンタクトが少なからずあります。こういった事故による火消し活動にコンタクトセンターは結構な労力を割いています。
また、“使用法がよく分からない”や、“パンフレットとwebの表記内容が異なっていて混乱する”、“返金や返品交換の手順が面倒”だったりと顧客の期待値に会社のプロセスが追いついていなくて発生するコンタクトも多いはずです。これを「プロセス改善」コンタクト群と呼びます。事故対応のような緊急性はないものの恒常的に顧客から寄せられる多くのコンタクトがそこにあります。
加えて人が対応しなくても機能さえ提供していれば顧客自身が解決できるはずのコンタクトは、「自動化対象」コンタクト群として存在します。残高確認や在庫確認、本人認証、予約やキャンセルといったルーティン化されたプロセスを持つコンタクトです。
コンタクトリーズン別にコンタクトを整理するとどのようなコンタクト対応をしているかの実態がわかります。センターが機能すべきはこの実態を正確に把握して、商品、サービス、プロセスを是正することです。コンタクトリーズン分析さえ行っていれば、他部門と連携・協調したコンタクト抑止計画や実施施策を展開することができます。
同時に組織としてのコンタクトセンターは、無駄を省き、生産性を上げる日常的な内部努力が必要です。
稼働率を意識したアイドリングタイムの適正化をはじめとして、コンタクト対応のプロセス成熟度を高め、なおかつ個々のコンタクトに集中して顧客満足度を高める応対の質を上げる努力を必要とします。
これら個々の施策や目標管理を徹底することによって、コンタクト量は減り、処理時間は短縮されて結果的に図の左隅のごとく従来と比べるとコンパクトな必要時間数・人員数で賄えることになるわけです。
縦軸のコンタクト量を、本来有人で対応するべき業務に集中し、横軸の必要時間(要員数)の適正化を 内部努力で実行することが人員抑制の解決策です。
現状の運営を見直して、本来受けるべきコンタクトに集中し、無駄を排除し、生産性を高めることが人手不足を解消する根本解決策なのです。皆さんのセンターではこのようなやるべきことをやっても尚人員不足なのでしょうか?
人員計画に余裕が生まれるのであればマルチチャネル対応や、ハイブリッドセンターの運営を意識した高度人材への育成にあてましょう。
まずはコンタクトを科学して、実態を把握し計画的な施策導入を進めてみてはいかがでしょうか?

AIや先進技術は大いに役に立つ

前述方法論の押さえるべきポイントは;

  • ・コンタクトリーズンを把握して“人”で対応すべきコンタクトに集中する
  • ・プロセス起因+自動化可能なコンタクトに対して関係部門と調整して抑止施策を展開する
  • ・有人対応コンタクトの発生パターンを予測し要員計画を徹底する
  • ・ナレッジ構築とトレーニングに注力し個々人の能力開発に努める
  • ・モチベーションとチーム力で品質と効率を高める

ということになります。
これはセンター規模にかかわらずすべてのセンターにおいて有効な方法論です。
考え方と手順を理解していれば施策のどこにAIテクノロジーが応用できるかもわかります。応用した結果の効果も想定できます。
今やコンタクトの音声やテキストからコンタクトリーズンを整理することも容易になりました。
プロセス起因のコンタクトはVOCの対象となるべきコンタクト群ですが、音声のテキスト化により顧客の声の要約とレポーティングも可能です。
人でなければならないコンタクトに対応する際にオペレータが必要とする情報をリアルタイムに提供することも有益です。
どのような場合にどういったテクノロジーの支援が必要かは具体的なコンタクトリーズンを想定してみると適用領域が明らかになります。投資効果の期待値を想定しながらテクノロジー導入を進めることは建設的です。
まずは現状を把握し、施策展開の合理的な方法を考えてみませんか?

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

お問い合わせはこちら

より良いブランドエクスペリエンスを提供するため、ビジネスを成長させるため、
最適なコンタクトセンターを構築するため、楽天コミュニケーションズに何ができるか是非ご相談ください

© Rakuten Communications Corp.