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第4回 成長企業に学ぶCX追求

“企業が成長する”という実態を顧客視点でみると、顧客数が増えること、顧客ごとの平均購入単価があがること、購入頻度が高くなることのいずれかを実現している状態です。そして、言うまでもなく成長を支援するコンタクトセンターの顧客戦略は、顧客の潜在期待に応えて顧客基盤を維持・拡大することにあります。
コンタクトセンターが、顧客という資産を育み増やすためにCXを追求できてこそ事業成長に貢献できることになるのです。
周囲を眺めれば、圧倒的な利便性や経済性で事業成長を実現している企業群があります。そのような成長企業はテクノロジーの優秀さや革新的なビジネスモデルだけによって成長してきたのではありません。本質的な顧客の声を追求する文化があるからこそ成長しているのです。この本質を追求する企業群とそうでない企業群は2極化しており、両社のギャップは広がりつつある様相を呈しています。ギャップの広がりを抑え、成長力を発揮するためには先進企業のCX追求事例に学び、従来のしがらみを打破して顧客志向の会社に脱皮する仕組みを構築しなければなりません。顧客に向き合う最前線にいるコールセンターだからこそ肌身で感じるCX追求の重要性を、会社全体の方針とすべく自らがその先鋒を務める必要があるのです。

イー・パートナーズ 谷口 修

目の前の顧客対応より社内のプロセス改善のほうが重要

成長する企業=CXを追求する企業に共通する特徴は、何事においても“本質を追求する文化”があることです。個々の組織の部門最適を追求するのではなく会社全体のサービスプロセスの一貫性を追求します。

コンタクトセンターの組織戦略が、経営の期待値と顧客の期待値双方に応えるものでなければならず、顧客に疑問や負担、不安、不満を与えるかもしれないプロセスや品質課題が発見されれば即座に修正しようと働くメカニズムが存在します。図示した“コンタクトセンターのマネジメント体系”の左側の要素は主としてセンター内部で完結するものですが、成長企業はCX追求には右側要素を追求しなければ本質的な問題解決につながらないことを知っています。従って一過性の応対品質を磨くことにも努力はしますが、それよりも経営ポリシーや他部門のプロセスのほころびや一貫性を欠く事象を修正するか排除することの方に注力します。社内のプロセス改善の旗振りのほうが重要だと信じています。
この活動によってコンタクトセンターは経営のメカニズムの中に収まり、評価されているのです。顧客離反や再購買しない顧客が現れないように、社内プロセスに起因する問題発生に目を光らせ、それらを未然に防ぐ努力と、極力顧客の不安や負担を減らし利便性を高める努力を使命とするところが、成長企業が共通に持つ戦略の特徴です。

VOCはスピードが大事

戦略上重要な施策であるVOCメカニズムは、CXを追求する企業において他部門に「顧客の声」を提供して問題発生の根本要因を内包する他部署に注意喚起を図るといった遠慮した活動ではありません。一般的なVOC活動は、顧客の声の量をもとに社内の責任部署に改善勧告をするというものですが、これだと声を収集する時間がかかる上に解決までの時間がさらにかかることになり、その間顧客の不満は増え続けます。
CX追求企業は、スピードを重視します。事前にでも事後でも問題発生が確認できれば、改善のアクションもコンタクトセンターで即座に実行してしまうのです。支払いや決済のミス、配送・物流の遅延やトラブル、商品の欠品や不備、多様な解釈をもたらすキャンペーンなど即刻修正対応しなければ問題を増幅させてしまう問題は日常的に発生します。これらに対応する権限と機動力を持ち合わせていなければ顧客維持に責任を持てません。CX追求企業は、センター内部に社内各部門の窓口となる専門要員を配し実行権限を持たせて状況監視と万が一の際には対処できる体制にしています。
顧客の声に基づく、あるいはセンター側で事前に察知した事象に基づいて問題解決や予防を行い、その結果は事後報告するといったものになるわけです。VOCレポートは顧客の傾向を報告すると同時に、顧客の声に基づく課題対処の結果報告となります。

CX追求は全員でやる

1人1人のオペレータが、それぞれ担当する顧客にとっては会社の顔となるわけで、オペレータ全員がCX追求に邁進する組織文化が大事です。
全員が納得してやるべきことを認識している自律的な組織はかなりフラットであり、階層構造が一般的な上意下達をよしとする文化を持つ企業ではなかなか作るのは困難です。顧客をハッピーにしようとすればオペレータもハッピーでなければなりません。上から指示をされ、ルールや制約を押し付けられている環境ではとても顧客志向にはなれません。例えば、顧客応対の基準や評価ガイドラインも押し付けではなく、オペレータ自らが決めるべきなのです。その延長上では、品質管理の方法についても発想の転換が必要になります。
一例ですが、次に示す図は、品質管理の悲しい現実を描いています。一般的な品質管理は、品質管理専門の担当者によるサンプリングコールモニタリングであり、それはオペレータにとって公平・公正なものではありません。サンプリングすべきコールは通話時間の長い短いあるいは様々なコールリーズンに潜んでいます。にもかかわらず平均的なコールを選び出して評価をすること自体、公平さを欠き目的達成のプロセスとしては適当ではありません。

CX追求を目指すセンターはオペレータに裁量を与えます。自分のコールを自分で評価するのです。 電話に限らず全てのコンタクトの応対をオペレータ自ら評価して採点する全件評価が最も公平・公正です。「大変良くできた」、から「できなかった」までのシンプルな4段階評価をボタン入力する度であれば、これによるパフォーマンス低下はほとんどありません。

(参考ながらコネクト・ストームではオペレータ自らの全件評価を行う機能を標準的に装備することができます。詳細説明はこちら)

本質的な顧客に対するサービスプロセスの一貫性追求を全員が使命と認識すると同様に、自分自身が全件評価する評価環境などはモチベーションを高める上でCX追求企業が持つべきものでしょう。

CX追求企業は、目標意識を持ち、日々達成感を味わうことのできるオペレータ集団を擁しています。そのような組織を作るには、ルールも環境も変えなければなりませんが、今チャレンジしなければ採用難の時代、益々問題を増幅することになってしまいます。

問題を起こさないことの“価値”

解約を抑止する、あるいは苦情を沈静化させるなどの対症療法的な仕事はコンタクトセンターの“人”でなければできない仕事ではあるものの、それよりも問題を起こさないプロセスを作り出し、日常的に監視する“組織”であるほうが本質的な根本原因対処であり会社にとって“価値”があります。CX追求の原点は、コンタクトセンターが監視と追跡そして改善の機能を持つことによって会社のサービスプロセスの一貫性を保つことであり、問題発生を未然に抑止することなのです。
ハインリッヒの法則にいうところの重大事故の前の29件のニアミス、その前の300件のヒヤリハットはそのままコンタクトセンターの運営原則となります。ヒヤリハットを観測すれば即座に根本原因の調査と特定を急ぎ、どこの部門から発生した問題であっても自ら率先して改善のアクションを起こす機動的なセンターこそがCX追求の資質を持つセンターと言えるのです。適切な指標を設定し、テクノロジーによる測定と集計を行い、常に顧客の行動を追跡し、傾向を把握して機動的に改善施策を実行できる組織を作りましょう。

2019年掲載

著者プロフィール

谷口 修

コールセンターへのシステム導入経験がきっかけとなり、以降100社を超えるコールセンター構築やアセスメントをコンサルタントとして手がけ、センター責任者としてコールセンターを運用した経験を有する、コールセンターを前方位から語れるオーソリティ。セミナー講演、研修講師でのファンも多く、自ら創設しボランティアで運営するコンタクトセンター・アワードのコミュニティーでも独自の理論と合理的なアドバイスで好評を博している。

著書:
「実践!顧客感動を生むコールセンター」2006年監訳・出版/イーストプレス刊
「戦略的顧客対応 -理論と実践-」2008年監訳・出版/ファーストプレス刊
「戦略的コールセンターのすすめ」2014年リックテレコム刊
「コールセンターの経営学」2015年リックテレコム刊

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