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連載コラム:
コールセンター用語を
ITとマネジメントの最新トレンドから考える

第10回 デジタルシフト

DX(デジタルトランスフォーメーション)とかデジタルシフトという言葉をよく耳にします。細かい言葉の背景や定義はいろいろあると思いますが、経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。コールセンターをはじめとする顧客接点にもデジタル化の波は押し寄せています。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

コールセンター・ディストピア

ではコールセンターにはバラ色の未来が待っているのでしょうか?答えはYESであり、NOです。そして今、何も決断しなければ「NO」の暗澹たる未来が待っています。それはコールセンター・ディストピアともいえる世界です。
『応答率95%以上といっていた時代はいつだろうか、今月もコールセンターの応答率は30%台。毎月離職者がでているのに、一向に新人は採用できない。10年前にはAI化とかチャットボット化といって、高いシステムを入れたらしいけど、FAQを整理するのを現場に押し付けたまま全然進まない。事務処理の自動化もウチの会社は例外処理や不備対応が多くて、人の作業も思ったほど減らない。現場の負担はさらに大きくなっている。在宅勤務もセキュリティの問題があるからって、ウチは進んでいない。顧客満足度も同業他社に負けっぱなし。もう自分も辞めたほうがいいのかな。』
10年後の2030年には644万人の労働力不足になるという調査結果があります。働く女性を増やす、働くシニアを増やす、働く外国人を増やすという施策を行っても、なお298万人が不足するといわれており、生産性を上げる施策をしなければ対応はできません。わずか10年後です。日本社会全体が労働力不足に陥る中にあって、今と同じやり方でコールセンターが機能するでしょうか。

デジタルシフトが必須

今ならまだ間に合います。私がコールセンターのコンサルティングに取り組む、心を突き動かす動機はここです。いま、コールセンターはデジタルシフトにしっかりと舵をとらなければならないのです。
デジタルシフトに成功したセンターはどのようになるのでしょうか?
『いまではチャットボットやFAQなどで顧客はいつでも簡単に問合せが解決する。コールセンターの入電も減っているけれど、やはりオペレーターが必要な対応もある。でも様々な支援システムのおかげで対応は楽になっている。感情解析のおかげでクレームに困っていたらすぐSVが助けてくれるし。もうコールセンターに10年働いているけれど、顧客対応だけに時間を使うのではなくて、AIやチャットボットがうまく動くように設計にも参加している。今では8割くらいは在宅で勤務ができるけど、シフトの入り方も融通が利く。上司や同僚とのコミュニケーションもテレビ会議ですぐにつながる。今の上司とは実際にあったことがないけれど、面談も定期的にあっていい感じ。顧客満足度やNPSも業界ナンバーワンが続いている。働きがいのある仕事だよ。』

  • ・顧客満足度とロイヤルティ

    コールセンターは顧客データの宝庫であるといわれてきました。いまも違いはありませんが、顧客の行動は「デジタル化」により様々なものが統合されデータ化されています。コールセンターの活動も単にコールの記録というだけでなく、音声認識によるテキスト化や感情解析などを活用し、それらに統合され分析されます。
  • ・顧客接点のチャネル

    電話対応は今後も残りますが、チャットやチャットボット、FAQやWEBサービス、スマートフォンアプリなどの自動化したサービスと連携します。
  • ・就業者の働き方

    在宅型コールセンターはコールセンターにとって当たり前となります。採用・教育/研修もリモート環境で実施され、日常的な業務もデジタル化します。
  • ・マネジメント

    コールセンターのマネジメントは、大規模な立地で集合的なマネジメントからデジタルなコミュニケーションを中心としたものになります。

サービスの差は企業の成否を分ける

今後の企業の成否は、新しい製品やサービスの開発以上に、どのような顧客体験を提供できるかが重要といわれています。デジタル化する前の段階では、コールセンターは人海戦術の世界であり、人的なマネジメントが重視されてきました。しかし、デジタル・コミュニケーションが一般化する世界では、コールセンターも変化が必須です。顧客に提供するチャネル・業務プロセス・人材マネジメント、すべてにデジタル化を目指す必要が出てきました。この波に今乗ることができるか、決断を遅らせるかにより、10年後にディストピアのようなコールセンターになるか、デジタル化に成功したコールセンターになるかが決まります。同業他社としてサービスも肩を並べていると信じていたのに、近い未来ではサービスは大きな差となり企業の成否を分けることにもなるのです。

まとめ

  • ① コールセンターにもデジタル化・デジタルシフトの波は来ている
  • ② 決断を遅らせれば、ディストピア的なコールセンターの世界が待っている
  • ③ デジタルシフトに成功すればそれはサービスの差となり企業の成功を決定づける

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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