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連載コラム:
コールセンター用語を
ITとマネジメントの最新トレンドから考える

第2回 スキルベースルーティング

前回はIVRシステムについて書きました。IVRが顧客の操作を促し、サービスを分岐するためのシステムだとすると、スキルベースルーティングはどのオペレーターがどのタイプのコールに対応するのかをコントロールする受け側のシステムです。今回はこのスキルベースルーティングについて書いていきます。前回のコラムを見ながら読んでいただくとより深くご理解いただけるかもしれません。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

スキルベースルーティング

IVRの音声ガイダンスに沿って、顧客が操作したあと、どのようにコールは流れていくのでしょうか。顧客の視点で見れば、選んだサービスについての知識やスキルを持った適切なオペレーターに電話がつながって、スムーズに対応してもらうことを期待するでしょう。音合わせの内容と対応者のスキルのアンマッチを防ぐのがスキルベースルーティングの目的です。

スキルベースルーティングの設定例

シンプルな例ですが、サンプルを見てみましょう。お問い合わせの分類が注文、相談、修理に3つに分かれていて、注文はシンプルな対応で新人の登竜門になっており、すべてのオペレーターが注文の電話対応は可能になっています。また相談の電話は一番ボリュームが多く、かつ様々な問い合わせが入ってくるので、電話対応のスキルを獲得したオペレーターが次に目指すスキルです。さらに修理は一番難易度が高い電話で、相談の電話を一通り学んでから、特に技術系のスキルに長けたオペレーターが修理のスキルを学びます。コールのボリュームそのものは多くはありませんが、1本あたりの処理時間が長くなったり苦情になったりすることもあるので、常に一定人数は待機することが必要になっています。

実際にはどのようにスキルに応じて電話が振り分けられるのか

スキルベースルーティングの基本的な機能として、オペレーターグループごとのスキル設定、さらに入電の優先順位の調整ができます。図例のように、人材育成の段階に合わせて、スキルグループを分け、入電内容を絞って優先着信させることも可能です。

  • グループA

    新人グループ。コールに慣れていくことも必要なので注文のスキルのみ設定。結果、注文の電話しか入ってきません。
  • グループB

    売上貢献ができるので注文のスキルを優先度高く設定していますが、相談の電話のトレーニングを受けており、相談の電話の対応が可能です。
  • グループC

    通常は最も件数の多い相談電話を主に担当していますが、修理の対応スキルも主要なものについては研修しており修理の対応も可能としています。
  • グループD

    ベテランオペレーターグループ。すべてのスキルを付与されており、すべての電話が対応可能です。しかし、注文や相談には、より優先度の高い設定のオペレーターグループや、そのスキルしかもたないオペレーターグループがいるため、グループDには修理の電話が優先的に入電することになります。

スキルベースルーティングは、設定の理解とリアルタイムの調整が重要

上記の例では、オペレーターのスキルに合わせたルーティングでしたが、顧客戦略や顧客のセグメンテーション上の優先順位から、このタイプのお客様は優先して対応したい、再コールの場合は前回と同じオペレーターに接続させたいなどの施策があるかもしれません。例えば、カード会社でランクの高い会員や解約を阻止したい会員には、優秀なオペレーターグループに対応させたいといったルーティングが必要なケースもあるでしょう。その意味で、スキルベースルーティングは品質と効率性を担保するために必須の機能といえます。しかし、同時に重要なのが、コールの入電状況の変化やスタッフの着台数などに応じて、スキルの設定をリアルタイムに変更していくことです。パフォーマンスの状況をみて、特定のグループに待ち時間が多く発生しているときなどは、スキルの付与の仕方や優先順位を修正することもできます。クラウド型コールセンターシステムではIVRの設定が容易であるものが多いと前回書きましたが、それに対応してオペレーターのスキル設定もビジュアル的に非常にわかりやすくなっています。さらにリアルタイムのレポーティングについても得意としているので、システムの検討の際にはこうした視点も大切になります。

先進的IVRとコールセンターの働き方

V-IVRのイメージ

前回も書きましたが、V-IVR(ビジュアルIVR)の普及が始まり、スマートフォンを中心にして、コールだけでなく対人チャットへ誘導したり、AI化したFAQやチャットボットに誘導したりと、顧客にとってはとても便利に、そしてコールセンターにとってはコール削減として注目されています。V-IVRでFAQやチャットボットに誘導し、その品質が高ければ、場合によっては、ほとんどの顧客が自己解決でき、それ以外はすべてチャットサポートだけになるというようなケースが出てくると思われます。また、AI-IVRであれば音声認識機能とAIを組み合わせて、オペレーターと話しているかのような自然なやりとりでコールの割り振りや音声合成での回答を得ることができるようになります。スキルベースルーティングの基本を理解し、どのような形で人材育成と日々の効果的なオペレーションを遂行していくか、マネジメントとシステムの両面からしっかりと考えていくことが必要になってきます。

まとめ

  • ① スキルベースルーティングは、品質と効率化のために必須のシステムである
  • ② センター方針の理解、対応スキルのリアルタイムの監視が重要である
  • ③ V-IVR時代には、より柔軟な人材育成とスキルベース設定が求められる

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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