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連載コラム:
コールセンター用語を
ITとマネジメントの最新トレンドから考える

第3回 品質管理と音声認識・感情解析

コールセンターの品質管理は、あらゆるコールセンターのマネジメントの頭を悩ます永遠の課題であることは間違いありません。そして今、コールセンターの品質管理の考え方と手法に大きな変革の時が来ています。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

コールセンターの品質管理の手法:モニタリング

コールセンターの品質管理の方法の1つにモニタリングがあります。コールセンターのモニタリングは音声を確認し、会話の内容を品質としてチェック・評価します。長年、この方法で音声品質をチェックしてきましたが、これらは、対応時間の分だけ聞く時間がかかり、録音データの場合には詳細なチェックのためのリピート再生、評価レポートの作成など多くの労力を要します。さらに、評価者による評価の偏りをなくすため、評価基準の調整や甘辛のチェックなどカリブレーションと呼ばれる活動も必要になってきました。そのため、毎月オペレーター1名当たり1回のモニタリング評価が行われていればよいほうで、四半期毎になってしまったり、繁忙期にはモニタリングによる品質評価を中断してしまったりということも、よくコンサルティングの現場では観察してきました。

音声認識が品質管理のプロセスを一変させる

これまでのモニタリングは、当然すべてのコールを聞いて評価することはできないので、オペレーターのコールを何本かサンプリングしてチェックをするということしかできませんでした。そのため、たまたま納得のいかないコールが選定されて評価が低く、オペレーターから不満がでたり、モニタリングする件数が少なすぎるため、本当の品質と実態に乖離が出てしまったり、ということもありました。
しかし、音声認識システムがそれらを一変させました。音声認識の精度の向上、リアルタイム性、クラウド化でより低い導入コストになったことなどが背景にあります。すべての音声をテキスト化し、NGワードや間違った言葉遣いのチェック、顧客からの「ありがとう」などの賞賛ワードなどにより、対応中のオペレーターにAIがリアルタイムでフィードバックします。評価者による偏りもなく品質を数値化し、継続的に追っていくことも可能です。着信数の1%にも満たないモニタリングで、場合によっては数日後にフィードバックをするようなモニタリングは非効率になっていきます。もちろん、カウンセリング的なアプローチでの品質に関するオペレーターとの面談は今後も必要ですが、それも数少ないサンプルを基に行うのか、全件を対象としたデータを基に行うのかでいえば効果は明白です。

音声認識を活用したモニタリングの特徴

コールセンターの品質管理のイノベーションの波にいつ乗っていくのか、顧客接点の中心であるコールセンターの競争優位性の確保には非常に重要な判断ポイントです。

モニタリングによる品質評価のポイントはどのように変わってきたか

品質評価ポイントの遷移

<マナーの時代>

コールセンターが産業として勃興してきた90年代前半までは、まだまだ科学的な品質管理手法が業界に確立しておらず、どちらかというと電話対応時の話し方やマナーに重点が置かれていました。話し方やマナーが重視されてはいたものの、それらは顧客満足度や売上に直接的な影響を与えた企業が少なかったことが、後の分析で判明しています。

<精度の時代>

インターネット系のサービスや金融系のコールセンターが大規模化していくようになると、顧客に間違いを案内していないか、顧客と会社に不利益な案内になっていないか、コンプライアンス上の問題がないかなど、対応の「精度」が重視されるようになりました。精度が重視されるのと並行して、モニタリング評価の正しさを求め、モニタリングの工数が大きくなりました。

<効果の時代>

今、品質管理に新しい基準が求められています。サブスクリプション型のビジネスが多くなり、顧客が継続して企業のサービスを利用し続けてくれることが重要な時代になってきました。顧客のロイヤルティ(使い続けてくれること)と、より強い関係構築(より高付加価値のサービスに移行してくれること)が重要になってきています。会社として間違った案内はしていないから大丈夫だという会社本位の視点だけでなく、問い合わせをした後に顧客の意識や感情・購買行動などに「効果」があったのかが重要になっています。

音声認識によって、全件モニタリングが現実的に可能となった現在、企業にとっての効果が最大限発揮できる対応ができていたかをすべて確認し、データから顧客導線を見直し、対応品質と顧客の継続性を見ていくのが、今の時代にやるべきモニタリングです。

まとめ

  • ① コールセンターの品質管理手法は今もモニタリングである
  • ② 品質評価のポイントはマナーから精度へ、そしていま効果へ
  • ③ 音声認識は品質管理プロセスのイノベーションである

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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