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コールセンター用語を
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第5回 FAQ/ナレッジマネジメント

実はナレッジマネジメントのコンセプトには流行の波があります。昨今の流行もそうした一つの波とも言えますが、大きな違いがあります。コンタクトセンターのナレッジマネジメントによるFAQの充実、そしてさらにそれがチャットボットなどのAIにより顧客対応にも活用されるため、より本格的な取り組みが求められる点です。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

ナレッジを制する者が顧客接点を制する

ナレッジマネジメントとは、ナレッジ(知識)をマネジメントして、的確に提供できるようにすることです。コンタクトセンターにおける知識やプロセスに関する情報をどこまで、どのように提供したらよいのか、情報の構築と活用までがマネジメントの範囲となります。コールセンターにおいて、顧客対応に必要な知識や情報を、最新の形で正確にわかりやすく迅速に提供することが重要です。顧客満足度も顧客ロイヤルティも基本的には、顧客が望む情報や解決を提供することが前提であり、迅速に情報の提示ができなければ、処理時間がかかるので効率性に影響し、コスト増の要因にもなります。したがって、ナレッジマネジメントはコールセンターが円滑に運営される要の役割を果たします。

FAQとは何か

FAQとはFrequently Asked Questionのことで、文字通りよくある質問という意味になります。ナレッジを一問一答のQ&A形式にしたもので、頻度高く発生する問合せに対してFAQを作成することで、オペレーターの対応支援だけでなく、WEB上で公開したり、チャットボットのシナリオに導入したりすることで、顧客の自己解決支援にもなります。
FAQでどのような質問をどこまで作ったらよいのかなどのカバー範囲、そしてどのような答えならば必要十分なのかなどを、FAQの利用度や顧客の満足度、解決率などから分析し、常に最新のものに更新していくことが重要です。最近では、コールセンターの音声認識システムを活用してどのような質問が多いのか、顧客が迷うポイントなどをテキストから解析し、自動的にFAQを生成したり、FAQのカテゴリーを整理したり、FAQの作成を促すなど、FAQ構築とナレッジマネジメントを支援するシステムが出ています。

FAQの構築と活用のサイクル

誰がナレッジマネジメントを担うのか

システムがFAQの自動更新や自動生成を支援するといっても、依然としてコールセンターに関わる人が基本的な教育用のナレッジを構築したり、FAQのチェックをしたりしていかなければなりません。ナレッジマネジメントは中央集権的な形で実施されてくることが多かったと思います。ナレッジの制作には、専門的な知識が必要であったり、抜けもれがないように他部門の確認をとったり、情報を整理してわかりやすい形で作成しなければならない、といった制約があるためです。しかし、その結果、情報が更新されるのが遅い、必要な情報が見つからない、専門的かつ網羅的に書かれているため難しくわかりづらいといった弊害も出てきました。そこで、実際に知識を活用して作業を行っている人の経験や知識を集約し、再利用できるようなプロセスを導入する動きが出てきました。一般の世界でいうと、Wikipediaのようなものです。その用語の知識や関連する情報を持っている人が一定の管理下のもとで情報を書き込むことができ、順次新しい情報があればまた別の人が追加していきます。もちろん間違いや情報の偏りなどが発見されることもあり、学術的な用途では活用はできませんが、こうした形で、企業組織内で自主的なナレッジ構築と修正を繰り返していく方法がKCS(Knowledge-Centered Service)として注目されています。
コールセンターにおいては、実際にFAQを活用するオペレーターが積極的に自ら持っている知識をFAQなどに記述できるようにすることや、その更新などに関与できるようにすることになります。

求められる統計分析的なアプローチ

さらにチャットボットやFAQによって、ほとんどの顧客が自己解決できる運営を目指すようになってくると、FAQの作成や更新の判断は担当者の印象レベルではなく、テキスト化された音声データや、問い合わせ履歴、検索キーワードなど、様々なデータを統計的に分析した結果から行うことが必要になってきます。さらに、WebページからFAQやチャットボットへの流入経路の設計やその後の顧客行動から購入や契約などのコンバージョンに貢献したかなども見ていく必要があります。
今後は、コールセンターのナレッジチームは、単にFAQが正しく記述されているかを検証するスキルだけでなく、マーケティングの観点や統計的なスキルを持ったメンバーで構成される必要があります。これまで、縦割りの組織構成でWeb作成とFAQ作成が別部門のケースもよくありましたが、顧客ロイヤリティを考えたときには、WebとFAQの導線とアクセスデータ分析は切り離せない一連の業務として、チーム一体で臨むことが必要になってきます。

まとめ

  • ① ナレッジマネジメントとFAQはコールセンターの要である
  • ② FAQの構築は、中央集権型だけでなく現場の書き込みを促す仕組みも必要
  • ③ チャットボットやAIを活用したFAQの構築のためには統計的な分析も重要

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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