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連載コラム:
コールセンター用語を
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第4回 品質管理と顧客満足度/VOC

今回もコールセンターの品質管理について考えていきます。前回は品質管理のモニタリングについて述べました。今回は顧客満足度やVOCについて書いていきます。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

顧客満足度のあれこれ

この10年ほどで顧客からの品質評価に関しては、様々な指標が開発され広く活用されるようになってきたことや、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)については音声認識によるコールセンターの通話データのテキスト化、チャット対応の普及、さらにビッグデータを活用した様々な顧客の活動データとの相関分析など大きく様変わりしました。特にインターネット上で閲覧履歴や購買活動などの活動が詳細に取得できるようになったことで、コールセンターにおける顧客満足度の調査にも大きな影響があります。
これまでコールセンターでは、顧客満足度調査が広く活用されてきました。「あなたはこのサービス(商品)に満足しましたか?」というアンケート形式の質問で満足から不満足まで何段階かを設定し測定し、顧客の満足度具合を定量化します。しかし、個別の商品やサービスのプロセスの満足度を確認し改善活動に役立てることはできるのですが、それが顧客のロイヤルティ(愛着度や継続購入)にどのように影響し、売上や利益につながっていくのか明確にできないことがありました。コールセンターの満足度は高いのに、会員維持率が上がらない、商品の購入金額が上がらない、会員の維持率が変わらない、などです。

顧客満足度と顧客ロイヤルティの主要な指標

ネットプロモータースコア(NPS)は実は財務指標

そこで、開発されたのがネットプロモータースコア(NPS)です。「あなたはこの商品やサービスをあなたの友人や家族に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問で0~10段階で答える方法ですが、ネット通販など様々な商品・サービスの利用後に質問された方も多いかもしれません。NPSは海外の大手コンサルティング会社と統計分析の会社が共同して開発した指標です。顧客のロイヤルティを親しい人へのサービスの推奨度と定義し、調査対象企業の業績の変化を統計的に分析して作られました。すなわち、NPSのスコアの高い企業は、顧客ロイヤルティが高く、そして財務的な成長性も高いという統計的な有意性が実証できていることになります。NPSがこれだけ普及したのは、単に流行だけでなく顧客満足のあり方と企業の継続的な成長性の相関が認められたからといえるでしょう。

顧客が努力を要さないというカスタマーエフォート

NPSの成功により、サービス利用後の顧客の行動(再購入や会員の維持など)に注目した指標が開発されることになりましたが、次いでメジャーなのがカスタマーエフォートという指標です。「あなたはあなたの問題を解決するのにどのくらい努力を要しましたか?」という質問で、努力を要さず楽に解決できた、という顧客のほうがその後のロイヤルティが高いというデータに基づいています。
これはコールセンターに関係する者としては、ちょっと衝撃的です。WebやアプリのFAQやチャットボットでも解決できず、コールセンターに電話してようやく解決した、というお客様はセンターでの解決に至るまでに相当な苦労をされているので、たとえ良い対応をしたとしても、カスタマーエフォートのスコアは低くなることが多いのです。つまり、かかってくる電話にしっかりと対応するということも大切なのですが、そもそも問い合わせがなくても解決した、あるいはなにもしなくてもよい、楽だという環境をつくるほうがはるかに重要なのです。会社のいろいろなサービスプロセスで、仔細な手続きを定め、不備がでたらコールセンターがサポートしてしっかり解決していくというよりも、そもそも不備にしないで顧客の手を煩わせないことのほうがよいというものです。

1つ面白い事例があります。ある動画配信の会社が、全く利用せずに月会費のみを長期間払っていた会員を一律解約処理しました。普通なら、何もせずに会費のみを払ってくれる顧客がいるなら、黙っていようという経営者がいても不思議ではありません。ところが、この配信会社は、“一旦、解約処理しましたが、いつでも帰ってきてください”と表明したのです。これは、いつでもエフォートレスに解約できることをアピールしただけでなく、不本意にお金だけを取られていたという顧客を無理に継続させるよりも、本当にファンになった顧客に長く使ってもらったほうが企業の財務的な成長に貢献すると理解した上での対応なのです。

感情解析の活用

こうした指標を向上させていくときに、注目されているのが感情解析の技術です。企業と顧客との間に信頼関係の感情が生じ、自分の価値観をわかってくれているという良い感情が醸成されていくとき、顧客との関係は長く続いていくからです。技術的には、感情解析システムの技術もコールセンターの現場に活用できるようなサービスパッケージが登場しています。現在は録音データや音声認識もそうですが、音声をステレオ(左を顧客音声、右をオペレーター音声)という形で分離して認識・解析ができます。オペレーターの感情と顧客の感情を別々に解析できるのです。顧客の感情については、表面に現れる感情と心の奥深いところの感情の差異を見極めるのは実は大変難しいといわれていますが、顧客満足度調査や購買などの顧客活動の変化などとの相関性をデータ分析して、顧客対応方針やオペレーターの品質指導ポイントを検討するなどが期待できます。

コールセンターの顧客満足度やVOCの分析にもイノベーションが起きています。こうした新しいトレンドにもしっかりと対応できるプラットフォームを選び、積極的に試していくことが重要です。

まとめ

  • ① 顧客満足度やVOCの分析は、新しい指標や分析方法が生まれている
  • ② そもそも顧客の手間をかけない、エフォートレスなプロセス設計が重要である
  • ③ 感情解析やVOCのデータ分析などが導入しやすいプラットフォームにすることが重要である

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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