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連載コラム:
コールセンター用語を
ITとマネジメントの最新トレンドから考える

第8回 ワークフォースマネジメント

コールセンターのマネジメントやシステムで、WFMという言葉が出てきます。これはワークフォースマネジメントの省略形です。業務量予測と要員計画・シフト調整といったほうがしっくりくる方が多いかもしれません。今回はWFMについて考えていきます。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

WFMはコールセンターマネジメントの中心

コールセンターのマネジメントをどのように定義したらよいですか?という質問に対して、私はいつもブラッド・クリーブランド氏の言葉を思い浮かべます。ブラッドは、米国最大のコールセンター教育マテリアルを提供する企業のファウンダーです。彼は「コールセンターマネジメントとは、業務量の正確な予測に基づいて、適切なスキルの人材とリソースを、適時に配置し、サービスレベルと品質を確保する科学」であると定義しました。
サービスレベル(つながりやすさ)と品質を向上するためには、適切なスタッフの採用とスキルトレーニングだけでなく、業務量予測と要員計画に沿ったシフト調整をしなければならず、それは科学的な手法であるというのです。つまり、適切な要員管理はマネジメントの要諦だと述べているのです。

顧客の需要に応じたシフト配置がなぜ必要なのか

なぜワークフォースマネジメントが重要なのか、4つの側面から考えてみましょう

  • ① いつ会社とコンタクトをとるかは顧客の自由である

    企業の窓口には営業時間がありますが、その範囲内であれば、いつ顧客が会社にコンタクトをとるのかは顧客の自由です。それがセンターに対する顧客の需要です。
  • ② リアルタイムのチャネルはオペレーターの配置が重要

    電話および有人チャット対応は、リアルタイムのチャネルなので、その場にオペレーターがいなければ対応することができません。
  • ③ 少なすぎる要員配置はサービスレベルに影響する

    顧客の需要に対してオペレーターのシフト配置が少なすぎる場合、サービスレベル(つながりやすさ)が悪くなり、顧客満足度やロイヤルティにも深刻な影響があります。
  • ④ 多すぎる要員配置はコストになる

    顧客の需要に対してオペレーターのシフト配置が多すぎると、サービスレベルはよくなりますが、その分コールセンターのコストになります。昨今では、要員の採用費や時給が高くなっているため、人数に並行して採用や教育のコストも増大することになります。

ワークフォースマネジメントは
マネジメントプロセスの集合体である

コールセンターがつながりにくい状態のときに、しばしば現場のオペレーターやスーパーバイザーが怒られたり、責められたりする空気を感じてきました。しかし、つながりにくさはオペレーターやスーパーバイザーの問題でしょうか?ワークフォースマネジメントは「①予測」、「②要員計画」、「③シフト計画」、「④リアルタイムマネジメント」の一連の集合体です。

  • ① 業務量の予測

    これは過去の傾向やキャンペーンやプロモーション計画などを考慮してどのくらいの業務量が見込まれるのか、月・日・時間帯レベルで予測します。
  • ② 要員計画

    業務量予測の変化や退職予測などから、人材の採用計画や教育スケジュールを計画します。
  • ③ シフト計画

    時間帯ごとの予測の変化に応じて、実際に配置できる人数を調整します。オペレーターの勤務形態や勤務時間の関係で、需要に対してどうしても過多や不足がでるため、高度な調整が要求されます。
  • ④ リアルタイムマネジメント

    どんな精緻な予測でも当日の業務量が大幅に変動することがあります。業務量が予測より多い場合は応援を頼んだり、予測より少ない場合は余剰している要員を臨時で研修に入れたりします。

ワークフォースマネジメントのプロセス

このように考えると、現場のオペレーターやスーパーバイザーだけが怒られるのは必ずしも理にかなったことではなく、どのタイミングのマネジメントに問題があったかを分析し、改善することが重要であるとご理解いただけると思います。

ワークフォースマネジメントは
オムニチャネルで進化する

現在コールセンターでは、電話対応だけでなくチャット対応の導入が進んでいます。チャットの有人対応は電話とは異なり、同時に何人かの顧客を切り替えながら対応することがあります。顧客が入力したり考えていたりする間に、他の顧客の対応を行います。これはあまりに多くの顧客を同時対応すると1件当たりの対応時間が伸びたり、顧客をお待たせすることが多くなったりして、効率性と顧客満足度を損なう可能性あります。また、チャットボット、AIを活用したFAQサイトの公開、スマホアプリでの情報提供などの普及も見えてきました。これらの自動化したチャネルは、コールセンター窓口が閉じている時間も含めて24時間対応でき、業務量のキャパシティも制限がないので顧客の需要を吸収することができます。そのため繁忙期の増員が難しいケースなど、自動化したチャネルにうまく誘導することで、コールセンターの業務量を削減することも可能になります。自動化を含めたオムニチャネル化は、より柔軟に顧客の需要に対応できるようになるため、顧客の導線から流入量を予測し、さらに自動化対応から有人対応へ移行する業務量の予測も求められるようになります。

まとめ

  • ① 顧客の需要に正確に対応するためのワークフォースマネジメントは必須である
  • ② 予測・要員計画・シフト計画・リアルタイムマネジメントの4つのステップで考える
  • ③ オムニチャネル化、自動化したチャネルの導入ではより高度な顧客接点の導線からの予測も必要となる

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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