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連載コラム:
コンタクトセンターの
マネジメントとITシステム

第5回 センターシステムの選び方①
(専門家が語る選定のポイント~視点編)

コールセンターは、人とITシステムが基盤となっている組織です。これまでもコールセンターのシステムには、新たな技術や様々なトレンドが出現してきました。しかし、過去3年間の変化は非常に大きなものでした。それはクラウド型のコールセンターシステムの本格的な普及です。さらに今年のCOVID-19(新型コロナ)の影響は、コールセンターのマネジメントのトレンドに計り知れない影響を与えました。「アフター・コロナ」の流れを踏まえ、今回はセンターシステムの選び方について3回のシリーズでお届けします。

プライムフォース株式会社 澤田 哲理

エッセンシャル・ワーカーを守る

これまで、コールセンターはAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で大幅に縮小し、“今後なくなる職業”とさえ言われることもありました。しかし、都市ロックダウンで社会システムがストップした途端に、コールセンター、すなわち人間のオペレーターが企業の顧客接点の中心として欠かせなくなりました。コールセンターのオペレーターやスーパーバイザーなどの現場のスタッフは、医療関係者や社会インフラに関わる就業者と同じ「エッセンシャル・ワーカー(社会に必須の就業者)」であり、彼らを守ることが経営にとっての最重要事項の一つとなりました。
今までのように、拠点単位での事業継続性だけでなく、現場のスタッフの生命・安全・安心をどのように確保するかが問われます。これは同時に安心して業務に取り組めるための対応支援(ナレッジやFAQシステム、CRMシステム)や効果的なコミュニケーションを支えてくれるシステムの重要性が高まっていることを意味します。

エッセンシャル・ワーカーをどう守るか

カスタマー・ジャーニーを事業成長と事業継続から見直す

カスタマー・ジャーニー・マッピングという手法があります。顧客が企業の商品やサービスを知り、購入し、問い合わせや離反など、一連の顧客体験を分析する手法です。その際、典型的な顧客の人物像(ペルソナ)を明確に定義し、そのペルソナの行動分析から顧客目線でペインポイント(痛点)、すなわち顧客が不便に感じていることやカバーできていないサービスチャネルを明らかにしていきます。この誰が企業にとっての「顧客」かということ、そしてその顧客のロイヤルティを向上させるための分析が今、非常に重要になっています。
新型コロナの影響で、企業は緊急時に最優先でつながなければならない、“本当の顧客”が誰なのかを予め定義しておき、サービスを継続しなければならない優先度・重要度の高いプロセスを提供するという経営判断を要求されることになりました。
今、すべきことは平時の成長のためのカスタマー・ジャーニーと、非常時のための事業継続性確保のためのカスタマー・ジャーニーを描いておくことです。そのうえで、顧客と関わるあらゆるチャネルでのペインポイントを解消するシステム導入を検討しなければならないのです。これは、コールセンターのシステムという視点だけではなく、企業レベルでの顧客戦略とシステム導入の目的を整理しなければならないことを意味します。

顧客のすべての体験はジャーニーである

スピードと柔軟性を確保する

ビジネスのスピードと柔軟性に対する要求は高まり続けています。それは顧客接点・コールセンターにおける施策でも同様、顧客のニーズの変化、競合他社への対抗、新サービスや商品の投入、高度なデータマーケティングによるインサイドセールスやプロモーションなどに合わせた柔軟でスピーディな対応が求められます。新型コロナの影響下で、クラウド型システムを導入していた企業では、1週間から2週間以内で在宅型のコールセンターに全面移行できたのに対して、そうではない企業では早い組織でも4週間以上にわたる荒療治を要して、部分的な活用にとどまったところもあります。緊急時のみならず、平時にも変化に対応できるシステムであるかどうかは、重要な視点となります。

運用部門が主体性をもってシステムを選ぶ

導入にあたっては、経営と運用部門が主導権を握るべきです。少なくとも情報システム部門に任せっきりというわけにはいきません。経営は誰が顧客であり、何が今後の最重要施策であるかを把握し、運用部門はコールセンターのプロセスを理解しています。
今後のシステムのトレンドは間違いなく顧客体験のデジタル化であるといえますが、情報システムやプラットフォームありきではなく、それで何ができるのか、どのチャネルの、どのプロセスに影響があるのかを分析しなければなりません。クラウド型のシステムでは、高額な初期費用を数年もかけて減価償却をしていく形ではなく、月次のサブスクリプション型の支払いとなります。課金方式も従量制やアカウント数ベースのもの、業務量変化に対するそれらの料金の変化など様々です。そのため、現場の業務プロセスと業務量のインパクトを理解しなければ、費用対効果を計算することが難しいのです。一方で、これまで情報システム部門に依頼をしていた設定変更やレポートの出力などをユーザー部門側でかなりの部分まで実行できる柔軟性の高いシステムが増えています。少ない初期費用でアジャイル型(小さな単位やプロセスで、実装とテストを繰り返して展開していくこと)の導入が可能になっているため、短期間で業務の効率化やプロセスの改善などによる費用対効果が見込めます。これらの活動は、現場の運用部門が主導権をもって実施しなければなりません。

本当に必要かつ最適なコールセンターシステムを選定するには、経営や運用部門の主体的な参加が重要です。そのため客観的な視点で、経営とオペレーション両面からの業務調査、必要な機能を選定し、マネジメントとシステムの親和性を明示できる専門家の支援も場合によっては必要となります。コールのルーティングやレポーティングなどの機能性だけでなく、CRMやFAQなどのオペレーター支援のシステムとの親和性、データ分析やビジネスインテリジェンスとの連携サポートなど、最新情報をしっかり理解し、納得感を持って導入するとよいでしょう。

まとめ

  • ・コールセンターで働く人を守り、顧客との関係を構築するシステムが必要
  • ・システム導入のスピードと柔軟性の確保は、システム選定の重要ポイント
  • ・システム部門任せでなく、経営と運用部門がしっかりとシステムを選びましょう

著者プロフィール

澤田 哲理

マネジメントとITシステムの最新トレンドを組み合わせたコールセンター・コンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

顧客サービス部門オペレーターを皮切りに顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムの導入、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験する。
船井総合研究所グループ企業で14年にわたり、顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上の監査や支援を実施。
業界動向に対する研究や知見を通じて、次世代の顧客接点設計を手がける。
日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員として、スキル体系のほか5資格のテキストを執筆
CIAC Call Center Strategic Leader/ITILファウンデーション/PMP(Project Management Professional)/上級シスアドを過去に取得

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