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連載コラム:
コンタクトセンターの
マネジメントとITシステム

第3回 在宅コールセンターをどう作るか
(運営マネジメント編)

在宅コールセンターの運営というと難しそうに思いますが、マネジメントの考え方としては、センター運営でも在宅運営でも大きく変わりません。直接の声かけがチャットになったり、教育が集合教育からオンラインやEラーニングになったりと方法は変わるものの、マネジメントのフレームワークは本質的に変わりません。しかし、体制や管理方法の問題によって、失敗するケースもあります。今回は在宅化成功のために、おさえておきたい運営マネジメントについてお話しいたします。

プライムフォース株式会社 大松 祐子

在宅にしたらオペレーターはサボってしまうのか?!

コールセンターに限らず、在宅業務を導入するということは、「会社にいれば給与が発生するという時間に縛られた働き方」から「目標を掲げ、成果を上げる働き方」に変わらなければならないということです。
コールセンターは稼働時間の管理や対応実績など、他の業務よりも行動が見える化しやすい業務です。同一労働同一賃金も施行された中、対応件数、平均処理時間、顧客満足度など、業績・成果に基づいた給与体系はコールセンターでは導入しやすいと言えます。在宅勤務なのか、センター勤務なのかに関わらず、業績・成果に連動した給与体系では、オペレーターはサボるよりも、自己管理をもっと徹底しようという意識が強くなります。
・在宅オペレーターは、「自らのワークスタイルに合わせて働き、成果を上げる」
・管理者は「オペレーターのフォローと育成をし、成果につなげていく」
このようにオペレーターと管理者は依存関係ではなく、お互いが自立し、成果を目指して協力し合う関係性を目指すといいでしょう。

自立したプロのオペレーターの成長機会

件数実績と品質評価(お客様満足度評価)など成果報酬型の給与体系にしているセンターの場合、シフトでコール業務に就いた「時間」ではなく、「成果」によって給与が変わります。当然、忙しい時間にログインし、たくさん成果を上げたほうがオペレーターにとって効率的です。
固定的な勤務のシフトを組まなくても、忙しい時間帯に自然にオペレーターが集まるという仕組みで応募制の自由シフトで、在宅コールセンターを運営している企業もあります。
オペレーターは自分で働く時間を選択し、想定よりも成果が出ていない場合は、更に働く時間を増やすか、自己学習でスキルをつけ、より高い品質と満足度を目指すというように、オペレーターが自立した働き方しています。
これは、身内の介護で、働きたいけれども長時間の外出ができない方や、育児や通院などで勤務可能な時間が限られる方などには、とても働きやすい仕組みです。在宅であれば、往復の通勤時間がないので、その分を働く時間に充てられますし、少しの時間でも働いてもらえれば、企業としてはありがたいのです。

運営マネジメントスキルを高める

前回のプロセス設計編でお話ししましたが、在宅であっても以下の3つの状況理解をしっかりおこなえば、今までとほぼ同じ環境でマネジメントができます。

  • ① 「通話内容の見える化」
  • ② 「通話中のオペレーターとのコミュニケーション/支援」
  • ③  「リアルタイムの稼働状況確認」

これらは状況を理解する機能や手法であって、マネジメントそのものではありません。言い換えれば、状況が理解できても、マネジメントの方法を管理者が実行できなければ、使われない機能になってしまいます。
例えば、稼働状況を見て応答率が低ければ、オペレーターに声をかけて後処理を短くしたり、稼働率を高めたりするのはよくあることです。しかし、オペレーターに頑張れと声がけするだけでは、応答率が低い根本的な解決にはなりません。「予測が外れていた」、「人材の適性配置ができていない」、「呼量が多い」、「FAQが整備されておらずトーク時間が長い」などはマネジメント側の責任です。それなのに、呼量予測や要員配置、呼減対策、FAQの整備、VOC分析など何もしていない管理者が多いのが実情です。
オペレーターからのエスカレーション対応に奔走している管理者は忙しそうには見えますが、運営マネジメントしているとは言えません。センター内でドタバタと走らないと管理できないのなら、在宅化したらどのように管理するのでしょうか。コールセンターの運営マネジメントは簡単ではありません。システムの機能を有効に活用するためには、システム導入と合わせてコールセンターマネジメントを新たにつくっていく必要があります。

リーダーをエスカレーション対応から解放する

みなさん、Tier1、Tier2という言葉は聞いたことありますか? 1次受け、2次受けと言うとわかりやすいと思います。コールセンター業界ではスキル層の段階としてよく使いますが、あなたのセンターでTier2(2次受け)をしているのは誰ですか?
日本ではTier2はリーダーもしくはSVとなっていることが多いですが、海外はマネジメントするメンバーとTier2のスキルグループメンバーを明確に分けています。もう少し言うと、リーダーという役職はないことが多いです。
Tier1はTier2に転送内通話やチャットを通じてエスカレーションし、内容に応じてTier2が案件を引き取ります。この引継ぎは、折り返しではなく、お客さまとの通話中におこなっています。クラウドコンタクトセンターでは、在宅業務者間のエスカレーションも可能です。
日本では、エスカレーションを受けながら、稼働状況確認して、声を掛けつつ、モニタリングをするなどスーパーマンでも難しいことをリーダーにさせようとしていますが、エスカレーションが多ければ、マネジメントする時間はほぼないでしょう。
在宅コールセンター化をするときには、Tier2という明確な役割を作り、Tier2とは別に管理者がしっかりと運営マネジメントできる体制を検討しましょう。

在宅コールセンター成功に向けたマインドセット

まとめ

  • ・オペレーターと管理者の双方が自立した働き方が求められる
  • ・在宅化に対応したマネジメントスキルを身につける
  • ・プロフェッショナルとして働くために役割を明確にする

著者プロフィール

大松 祐子

コールセンターのマネジメントとITシステムの最適化を総合的に支援するコンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

国内アウトソーサー最大手で、オペレーターを皮切りに、センター長・プロジェクトマネージャーとして運営および立ち上げ支援業務を14年以上にわたり実施。顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格の監査員・研修を担当し、のべ50社以上の監査および2000人以上のマネジメント研修に従事。2018年ユング心理学に基づく行動理論であるMBTIをコールセンターに適用し、科学的な手法に基づく、コミュニケーション形成やコーチングのトレーニング講師としても活動。

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