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連載コラム:
コンタクトセンターの
マネジメントとITシステム

第1回 在宅コールセンターをどう作るか
(概要編)

このところ新型コロナウィルスに関連する相談窓口が急激に増えています。政府や市町村などの要請で相談窓口が新たに設置され、ニュースやCMでも「不安なことがあれば窓口へご相談ください」と言っていますが、これに疑問を持った方もいるのではないでしょうか?相談窓口であるコールセンターは3密ではないのかと。
3密を避けましょうと言いながら、感染リスクが高いセンターを新たに設置している事実は時勢に逆らう動きのようにも思えます。しかし、もしこれが在宅コールセンターで相談受付をしているとなればどうでしょう。3密を避けながら、運営が可能ならば、事業者もコールセンターの従事者も安心できるに違いありません。

プライムフォース株式会社 大松 祐子

意外と簡単!? テレワーク

テレビ業界では、出演者が自宅からカメラを使って遠隔で番組に参加するという光景があっという間に広がりました。テレビの出演者のように個人情報や企業情報も持たずに、一方的に情報を発信していくということであれば、実は導入は簡単です。しかし、企業情報や個人情報を取り扱う業務となると、どうでしょうか?セキュリティに不安を持つ方も多くいるでしょう。
では、ここで質問です。クラウド上で企業情報や個人情報を共有する環境は、本当に脆弱でセキュリティに欠陥があるのでしょうか?答えはノーです。それは、家でお金を保管するより銀行に預けた方が安心と思うのと同じです。セキュリティの心配をする前に、まずは導入目的と成功の姿を明確にし、そこから安全の道を作っていくという手順が、セキュリティの不安を払しょくする第1歩です。

在宅コールセンターの導入手順

在宅コールセンターの導入で難しいのは、システム構築よりも運用構築ではないでしょうか?人材採用や教育、エスカレーション方法、品質の担保、情報の取り扱いなど、近くで見聞きしていないと、何が起こるかわからないという不安が導入を遠ざけています。安心して導入するためには、以下の手順に沿って進めていくことをお勧めします。

在宅コールセンターの導入手順

  • ① 導入目的とゴールの明確化

    まず、一番重要なのが目的とゴールを明確にすることです。何となく導入すると失敗します。成功判断基準を決めておくと、経営層への報告もしやすいでしょう。
  • ② 在宅コールセンター業務を選別

    音声通話だけなく、紙の書類を扱う業務などは当然、在宅業務には向いていません。紙を必要としない形のプロセス変更が必要です。また、最初に導入する業務としては、センシティブな情報を扱う業務や基幹システムを直接操作する業務もお勧めしません。
  • ③ 運営・管理の導線設計

    在宅といっても、ずっと誰とも会わずに業務ができるかというと、そうでもありません。社員のエンゲージメントや帰属意識を高めるために、上司や同僚のコミュニケーションの場としてサテライトオフィスを併用することもあります。都心から少し離れている場所に小さなサテライトオフィスを点在させ、自宅とサテライトオフィス勤務を自由に選択できたり、エスカレーションポイントとして、サテライトオフィスを活用したりするケースもあります。
  • ④ 運営・管理の手法検討

    エスカレーションや品質管理はどうしますか?今はチャットによるエスカレーションや音声テキスト化による自動モニタリングができる時代です。どのように運営管理していきたいかという構想を元に、システムに必要な機能を検討しておきましょう。
    また、リアルタイムのコール状況レポート機能は非常に重要です。遠隔でオペレーターを管理するため、状況が一目でわかる、カスタマイズのしやすさなど、レポートの表示・操作性もしっかりと検討しましょう。
  • ⑤ オペレーター宅の環境とファシリティ

    オペレーター宅から業務をする際のPC機材や通信環境について、仮想デスクトップやハードディスクがないPCの利用、指紋認証によるログインなど、どのような環境を確保すべきかを検討します。
  • ⑥ システムの選定と要件定義

    在宅コールセンターのビジョンと管理イメージができたら、それを必要要件としてRFP(提案依頼書)に載せ、実現可能なシステムを選定していきます。その際、ネットワークの接続だけでなく、電話通信網の接続についてもチェックしておかないと、後から外線発信の料金が想定以上にかかるということもあるので、注意しましょう。
  • ⑦ 運営場面を想定した開発と導入

    ここまで決まっていても、思っていたものとシステムの動きが違うということがあります。様々な運営場面を想定し、システム設定内容について合意しながら進めていくことが成功のカギとなります。

在宅コールセンターの導入メリット

在宅コールセンターはBCP(事業継続計画)の観点だけでなく、働き方改革の面からもお勧めです。モノと情報にあふれた時代に生きる若者は、お金ではない、“自分らしく、心の豊かさをもち、会社に縛られない働き方”を求めています。在宅コールセンターという働き方は、通勤時間と引き換えに、自分の時間を創出し、趣味や家族の時間に費やせるというプラス効果も多くあります。ぜひ、この機会に在宅コールセンターについて、真剣に検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ・導入目的と成功の姿から安全の道を作れば、セキュリティの懸念は払しょくできる
  • ・運用構築をしっかり行うことで、システム要件が固まる
  • ・在宅コールセンター導入はBCPだけでなく、新しい雇用の創出機会でもある

著者プロフィール

大松 祐子

コールセンターのマネジメントとITシステムの最適化を総合的に支援するコンサルティング会社
プライムフォース株式会社 共同ファウンダー/代表取締役

国内アウトソーサー最大手で、オペレーターを皮切りに、センター長・プロジェクトマネージャーとして運営および立ち上げ支援業務を14年以上にわたり実施。顧客接点のパフォーマンスマネジメントの世界標準であるCOPC規格の監査員・研修を担当し、のべ50社以上の監査および2000人以上のマネジメント研修に従事。2018年ユング心理学に基づく行動理論であるMBTIをコールセンターに適用し、科学的な手法に基づく、コミュニケーション形成やコーチングのトレーニング講師としても活動。

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